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腱板修復術後、他動運動を早期から開始する必要があるか?

腱板損傷に対する手術が進歩しているにもかかわらず、修復術後の非治癒率は20-90%とばらつきがみられます。良好な腱の修復、機能的アウトカムの獲得には、①手術そのものの技術、②リハビリテーションプロトコルの2つの因子が関与します。すなわち、術後の理学療法内容によっては手術の成績を左右しかねません。

他動運動の早期開始は、特に膝関節や足関節手術後に対して推奨されており、肩関節に対しても標準的なプロトコルと考えられます。実際、直視下法やミニオープン法の時代では、腱板修復術後早期の他動運動開始によりROM、疼痛に対して良好な結果が得られると報告されました(Raab 1996)。ところが、近年の基礎研究、臨床研究の結果から早期他動運動開始に対する疑問が提示されました。

①    動物実験より、エクササイズ群より固定群で棘上筋の治癒が良好であった(Gimbel 2007, Thomopoulos 2003)
②    臨床研究より、鏡視下腱板修復術後6週間の固定を行ってもROMに影響はなく、再断裂率が低い傾向にあった(Parsons 2010)


以上を踏まえると、鏡視下腱板修復術後では、早期より他動運動を開始しても、術後の可動域や機能、腱の治癒に固定群と比較して差を生じない可能性が考えられます。

Kim (2012)は鏡視下腱板修復術後患者105名を対象とし、無作為化対照研究を行いました。小断裂・中断裂が取り込まれ、大断裂は除外されています。56名が早期他動運動開始群に分類され、49名が固定群に分類されました。固定群では術後4-5週のブレース装着期間中に肩関節の他動運動を行わず、早期他動運動開始群では3-4回の自動介助運動を行いました。

その結果、①ROM、②疼痛(VAS)、③機能的スコア、④腱の治癒の全てにおいて有意な群間差を認めませんでした。

Kim 2012, Am J Sports Med Is Early Passive Motion Exercise Necessary After Arthroscopic Rotator Cuff Repair?


【抄読者のコメント】

本研究結果によると鏡視下腱板修復術後の早期他動運動開始に利点はみられず、これは先行研究(Parsons 2010)と概ね一致しております。報告数が少ないため決定的な結論を得ることはできませんが、術後は腱の治癒に重点を置く必要があるように感じます。

2012年にサンフランシスコで開催されたOrthopaedic Research Society annual meeting聴講した発表の1つに、固定が棘上筋腱・棘下筋腱の治癒に及ぼす効果に関する報告がありました。固定により棘下筋腱の治癒は促進されるが、棘上筋腱の治癒には悪影響を生じる、と言う結果でした。Ilkani-Pour et al. : Effect of Immobilization on a New, Two-Tendon Rat Rotator Cuff Repair Modelこの結果や他の研究結果を踏まえると、大断裂では固定期間を長くする必要があるかもしれません。

その他にも年齢や活動度、喫煙習慣、糖尿病の合併など治療方針の決定に関与する因子はたくさんありますが、研究により得られた新しい知見に応じて、理学療法プログラムも適宜修正する必要があると再確認した論文です。
腱板損傷 1141753076708703548

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