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癒着性肩関節包炎に対する米国理学療法士協会のガイドライン

「痛くて夜も眠れない」「しばらく経つのに、肩がなかなか挙がらない」
整形外科や関連施設に勤めていれば、このように肩関節の強い疼痛、長期に及ぶ可動域制限に悩む患者さんの治療を、1度は経験したことがあるのではないでしょうか。そんな肩関節痛・可動域制限が主症状である癒着性肩関節包炎に対して、今年に入り、米国理学療法士協会より臨床ガイドラインが公表されました。

Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis
Clinical Practice Guidelines Linked to the International Classification of Functioning, Disability, and Health From the Orthopaedic Section of the American Physical Therapy Association
http://www.jospt.org/doi/abs/10.2519/jospt.2013.0302#.UnDVlZSQeXQ

このガイドラインはRecommendations、Introduction、Methods、Clinical Guidelines、Summary of Recommendations、Author/Reviewer Affiliations and Contacs、Refferencesというコンテンツから構成されているのですが、このうちRecommendationsとClinical Guidelinesの一部について内容を紹介させて頂きます。

Recommendations


病態解剖学的特徴:肩関節痛と可動域制限を呈する癒着性肩関節包炎患者では、肩関節複合体周囲の関節包-靱帯や筋腱の障害を評価すべきである。肩関節可動域、特に下垂位や様々な外転角度における外旋制限は、治療計画の立案に特に重要な所見である。(理論的/基礎的エビデンスに基づく推奨)

危険因子:①糖尿病や甲状腺疾患患者は癒着性肩関節包炎に進行する危険性が高い。②40-65歳、女性、対側肩の癒着性肩関節包炎の既往のある者で発症しやすい。(中程度のエビデンスに基づく推奨)

臨床経過:癒着性肩関節包炎は疼痛・可動域制限の段階的進行によって特徴づけられる、連続性の病態として生じる。12-18ヶ月で多くの患者は機能障害がなくなるか最小になるが、軽度~中程度の可動域制限・疼痛が持続する可能性がある。(弱いエビデンスに基づく推奨)

診断/分類:癒着性肩関節包炎は、緩徐な進行性の疼痛、および挙上・回旋可動域制限を呈する病態であることを念頭に置くべきである。本ガイドラインに示されている評価・治療を用いることで、スクリーニング評価、鑑別診断、イリタビリティレベルの評価、治療計画の立案に役立つだろう。(専門家の意見に基づく推奨)

鑑別診断:患者の活動制限や機能障害が本ガイドラインの診断/分類に一致しない場合や、身体機能を正常化する介入によって患者の症状が改善しない場合、癒着性肩関節包炎以外の診断/分類を考えるべきである。(専門家の意見に基づく推奨)

評価-アウトカム:DASH、ASES、SPADIのような妥当性のある機能的アウトカムスコアを用いるべきである。介入前後にこれらのスコアを評価する必要がある。(強いエビデンスに基づく推奨)

評価-活動制限:肩関節痛に関連性のある、簡単に再現できる活動制限、参加制約を用い、患者の肩関節機能の変化を評価すべきである。(専門家の意見に基づく推奨)

評価-機能障害:主要な身体機能/構造障害を把握するために、疼痛や自動/他動肩関節可動域を評価する。肩甲上腕関節の副運動を評価することで、滑り運動の減少を特定できる。(理論的/基礎的エビデンスに基づく推奨)

治療-副腎皮質ステロイド注射:副腎皮質ステロイド注射と関節可動域運動・ストレッチングの併用は、関節可動域運動・ストレッチング単独と比較して、疼痛・機能改善に(4-6週での)短期的効果がある。(強いエビデンスに基づく推奨)

治療-患者教育:①疾患の自然経過について説明し、②疼痛のない可動域獲得につながるような活動修正を促し、③イリタビリティレベルに合わせた適切な強度のストレッチングを選択すべきである。(中程度のエビデンスに基づく推奨) 
治療-物理療法:短波ジアテルミー、超音波、電気刺激療法を組み合わせるべきである。(弱いエビデンスに基づく推奨)

治療-関節モビライゼーション:疼痛軽減、可動域改善に直結するモビライゼーションを選択する。(弱いエビデンスに基づく推奨)

治療-麻酔下マニピュレーション:保存療法に反応しない場合、麻酔下マニピュレーションを実施する。(弱いエビデンスに基づく推奨) 

治療-ストレッチング:イリタビリティレベルに合わせた適切な強度のストレッチングを選択すべきである。(中程度のエビデンスに基づく推奨)


Clinical Guidelines: Impairment/Function-Based Diagnosis

存在率

・肩関節痛の存在率:2.4-26%
・一次性癒着性肩関節包炎:一般人口の2-5.3%
・糖尿病や甲状腺疾患に関連する二次性癒着性肩関節包炎:4.3-38%

病態解剖学的特徴

・外転45°までは、関節包-靱帯複合体と肩甲下筋が外旋可動域の主要な制限因子である。肩甲下筋は外転0°で最も外旋可動域を制限する。90°外転位と比較して45°外転位で外旋可動域制限が大きい場合、制限因子として肩甲下筋が考えられる(エビデンスレベルⅡ)
・癒着性肩関節包炎患者では、関節包-靱帯複合体に新しい神経の成長が認められ、疼痛反応の増大と関連している可能性がある。滑膜病変が血管形成であれ滑膜炎であれ、強い疼痛が安静時または運動時に生じる(エビデンスレベルⅣ)
・関節包-靱帯複合体の線維症や拘縮が、直視下/鏡視下手術や組織学的検査によって認められる。関節包-靱帯複合体の全体が線維化するが、腱板疎部や特定の関節包-靱帯複合体が主に関与する。癒着性肩関節包炎患者における烏口上腕靭帯のリリースは、肩関節外旋可動域を劇的に増大させた(エビデンスレベルⅣ)
・他動関節可動域制限、特に下垂位や様々な外転角度における外旋可動域制限は、治療計画立案に有用な所見である(エビデンスレベルⅤ)

臨床経過

Stage 1(3ヶ月)
・可動域の最終域で鋭い痛み、安静時に疼く痛みを生じ、睡眠障害がある
・癒着や拘縮を伴わない広範性の滑膜反応
・ROM制限がないか最小なため、この初期の段階ではしばしば肩峰下インピンジメント症候群が疑われる
・腱板損傷がなく、早期から外旋制限がある場合、癒着性肩関節包炎に特徴的な所見であり、この初期の段階にみられる

Stage 2(3-9ヶ月)
・“painful” or “freezing” stage
・疼痛による可動域制限が全方向に生じる
・滑膜炎/血管形成が顕著であり、麻酔下でも可動域制限がある

Stage 3(9-15ヶ月)
・“frozen” stage
・滑膜炎/血管形成は減少するが、進行性の関節包-靱帯線維症により腋窩ひだの減少、ROM減少が生じる

Stage 4(15-24ヶ月)
・“thawing” stage
・疼痛は消失し始めるが、発症から15-24ヶ月にわたってスティフネスが持続する
・麻酔下でも変化しないような可動域制限が残存することもある
・関節包-靱帯複合体線維症はあるが、滑膜の関与は減少する
・癒着性肩関節包炎は治療をしなくても12-18ヶ月で落ち着くような病態と捉えられてきたが、線維増殖の範囲やその後の吸収過程によっては、軽度な症状が数年間持続することもある
・糖尿病患者では回復が遅延し、不良なアウトカムを招くこともある

診断/分類

肩関節痛・可動域制限/癒着性肩関節包炎
【包含基準】
・年齢40-65歳
・緩徐に発症し、疼痛・可動域制限が増悪
・疼痛・可動域制限による睡眠障害、整容・更衣・リーチ動作の妨げ
・肩甲上腕関節の可動域が多方向に制限され、特に外転位における外旋制限が最も顕著
・肩外転45°から90°にかけて外旋または内旋可動域が減少
・他動関節可動域の最終域で肩痛を再現
・肩甲上腕関節の副運動がすべての方向において制限あり
【除外基準】
・他動関節可動域が正常
・肩甲上腕関節炎の画像所見陽性
・肩外転45°から90°にかけて外旋または内旋可動域が増大、肩甲下筋筋膜の触診により肩痛再現
・上肢神経伸張テストで肩痛が再現され、神経張力を変化させることで疼痛が増大または減少する
・末梢神経の絞扼部位を触診することで肩痛が再現される

肩関節不安定性・運動協調障害 /肩関節脱臼・肩関節捻挫
【包含基準】
・年齢40歳未満
・肩関節脱臼の病歴あり
・過剰な肩甲上腕関節副運動が多方向において認められる
・肩関節屈曲や水平外転、外旋で不安感を生じる
【除外基準】
・肩関節脱臼の病歴なし
・広範囲の肩甲上腕関節可動域制限が認められる
・肩関節自動または他動運動の最終域で不安感を生じない

肩関節痛・筋力低下/腱板障害
【包含基準】
・オーバーヘッド動作によって症状が発症または増悪したか、転倒によって肩をつくような急性捻挫によって発症した
・自動挙上の中間域(90°程度)で引っかかる感じがあるか、疼痛が生じる
・肩関節屈曲・外転運動の中間域で実施される、腱板筋に対する徒手抵抗テストで肩関節痛が再現される
・腱板筋の弱化を認める
【除外基準】
・徒手抵抗テストで疼痛を生じない
・棘上筋、棘下筋、上腕二頭筋筋力が正常
・肩関節他動運動可動域制限が顕著


コメント

癒着性肩関節包炎の病態・診断/評価・治療に関して推奨されている内容をまとめ、今回は臨床経過・診断/分類に焦点を当てて読んだ部分をまとめてみました。まずはセラピストが患者さんの症状を正しく把握して、recommendationsにもあるように、疾患の臨床経過を説明し、”適切な時期に、適切な治療を”実施することが大切だと感じています。現在公表されているような臨床経過は、理学療法によって改善させることができるか?できるとすれば、どのような方法が適切か?気になるところですね。

より最近では、静的漸増ストレッチングデバイスが、癒着性肩関節包炎患者の可動域回復に効果的であると報告されました(Ibrahim 2013, Physiotherapy)。

このようなデバイスの開発が進めば、どこの病院に行っても、ある一定の治療効果が望めることになるかもしれませんので、とても興味深いですね。疼痛軽減に効果的なのは?可動域回復に効果的なのは?これからも少しずつ調べてみたいと思います。



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