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腱板断裂進行と疼痛の関係および断裂進行の危険因子

腱板損傷には無症候性と有症候性があり、無症候性、つまり痛みはないけれど超音波検査やMRI検査により発見される腱板断裂が、特に高齢になるほど多く認められます(参考:過去記事)。この無症候性腱板断裂がどのような経過をたどるのか、まだ十分には明らかになっておりませんが、現時点で利用できる研究結果を整理してみたいと思います。



無症候性腱板断裂の自然経過


58名の無症候性腱板断裂患者を対象として、3-8年間(平均5.5年間)前向きに自然経過を追った結果。経過観察が可能であった無症候性腱板断裂患者45名のうち、23名(51%)が平均2.8年で有症候性に変化した。年齢は有症候性に変化した者(平均67.3歳)と無症候性のままの者(平均72.4歳)に群間差なし。
Natural history of asymptomatic rotator cuff tears: a longitudinal analysis of asymptomatic tears detected sonographically.

195名の無症候性腱板断裂患者を対象として、0.5-5年間前向きに自然経過を追った結果。経過観察が可能であった無症候性腱板断裂患者99名のうち、44名(45%)が平均1.9年で有症候性に変化した。年齢は有症候性に変化した者(平均63.3歳)と無症候性のままの者(平均63.1歳)に群間差なし。
Symptomatic progression of asymptomatic rotator cuff tears: a prospective study of clinical and sonographic variables.

以上の結果に基づくと、追跡開始から2年前後で、約50%の無症候性腱板断裂患者が有症候性に変化するといえます。では、このように無症候性から有症候性に変化する腱板断裂患者にはどのような特徴があるのでしょうか。


断裂進行と疼痛の関係


上記の58名の無症候性腱板断裂患者を対象とした研究。超音波による追跡調査が可能であった23名のうち、14名が有症候性に変化、9名は無症候性のまま。腱板断裂サイズの進行は有症候性に変化した者の7/14名、無症候性にとどまった者の2/9名に認められた。この限られたサンプルによる分析では、断裂サイズの進行が認められた者の割合に群間差なし。
Natural history of asymptomatic rotator cuff tears: a longitudinal analysis of asymptomatic tears detected sonographically.

上記の195名の無症候性腱板断裂患者を対象とした研究。有症候性に変化した44名のうち、腱板部分断裂は10名(23%)、全層断裂は34名(77%)。無症候性にとどまった55名のうち、腱板部分断裂は20名(36%)、全層断裂は35名(64%)。部分断裂と全層断裂の割合は2群間に差なし。腱板断裂が進行した者の割合は、無症候性にとどまった群4%と比較して、有症候性に変化した群で23%と有意に大きかった。
Symptomatic progression of asymptomatic rotator cuff tears: a prospective study of clinical and sonographic variables.

60歳以下の有症候性腱板全層断裂患者に対して保存療法を実施し、実施前後で断裂進行と痛みの変化を調査した研究。経過観察が可能であった51名のうち、初期評価から平均29ヶ月後の経過観察で痛みがはっきりと残存していたのは33名(65%)、痛みなしか無視できる程度の痛みが残存していたのは18名(35%)であった。経過観察時点での疼痛残存と、断裂サイズの進行に関連性が認められた。経過観察で痛みがなかった18名のうち断裂サイズ進行が認められたのは25%であったのに対し、経過観察で痛みがあった33名では56%に断裂サイズの進行が認められた。
Natural history of nonoperatively treated symptomatic rotator cuff tears in patients 60 years old or younger.

以上の研究に基づくと、現時点で決定的な結論は得られないものの、腱板断裂の進行が疼痛と関連する可能性が示唆されます。断裂の進行が疼痛と関連しうるなら、断裂がどのような対象者で進行するのか、気になるところです。


断裂進行の危険因子


上記の60歳以下の有症候性腱板全層断裂患者を対象とした研究によると、年齢、性別、外傷歴、初期評価時の断裂サイズ、両側損傷のいずれも、断裂進行と関連を認めなかった。
Natural history of nonoperatively treated symptomatic rotator cuff tears in patients 60 years old or younger.

平均年齢58.8歳(38-84歳)の有症候性腱板断裂患者54名を対象として保存療法を実施し、腱板断裂の進行を調査した結果。腱板断裂進行と関連が認められたのは、年齢>60歳、全層断裂、腱板の脂肪変性であった。
Outcome of nonoperative treatment of symptomatic rotator cuff tears monitored by magnetic resonance imaging.

断裂進行の危険因子に関しては、2研究の対象やアウトカムが異なり、現時点で結論は得られません。対象者の年齢や断裂程度(部分または全層断裂)、アウトカムを統一したさらなる研究によって、明らかになっていくことと期待されます。


おわりに


今回レビューした研究結果にもとづくと、無症候性の腱板断裂のおよそ50%は約2年で断裂サイズが進行し、その断裂進行が疼痛発症または残存と関連する可能性があると言えそうです。昨年の肩関節学会で東北大学の研究グループから公表された結果も同様であり、症候性腱板断裂の53%は、17ヶ月で断裂サイズが拡大する(拡大速度:長さ6.0cm/年、幅3.6mm/年)とのことでした。断裂進行の危険因子は、喫煙、断裂サイズ1-2cm、完全断裂という興味深い結果でした。喫煙が腱板断裂のリスクを増大させるという過去の報告もありますので、喫煙のリスクに関しては患者さんに対する説明にも含んだほうが良さそうですね。



腱板損傷 5173757958706902218

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