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他動運動や自動介助運動で腱板はどれくらい活動するか?

腱板修復術後リハビリテーションの主たる目標は、可動域制限や筋力低下を最小限にしつつ修復した腱板の治癒を促すことです。術後リハビリテーションプロトコルを支持し、発展させるエビデンスレベルの高い研究は不足していますが、鏡視下腱板修復術後リハビリテーションの科学的根拠について理解を深め、臨床に活かす力が我々理学療法士には求められます。

術後早期は、どのようなリハビリテーションプロトコルを用いるにしても、修復組織の保護に重点を置きます。この時点では自動運動による過度な負荷を与えないことが重要視されますが、可動域制限の予防を同時に考慮する必要があります。そのため、自動運動は患部外の肘関節や手関節、頸部や肩甲帯に限定し、肩関節の他動運動を実施します。

医師から許可が出た時点で、肩関節を含む自動介助運動、自動運動へと進めていくことになります。通常は術後4-8週程度で運動開始になりますが、術後3ヶ月は特に再断裂のリスクもありますので(参考:腱板再断裂はいつ起こるか?)、どのような運動でどの程度の負荷が生じるのか抑えておくべきです。そこで今回は、主に鏡視下腱板修復術後リハビリテーションを円滑にすすめる上で必要な、他動運動、自動介助運動中の腱板筋活動について整理することとしました。




患部外エクササイズ


肘関節運動

対象は21-30歳の健常者16名、被検筋は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋上部線維(針筋電図)。立位での肘関節屈伸運動を、対側上肢での支持なし、または支持ありで実施し、最大筋活動を%MVCで算出。棘上筋は支持なしと比較して支持ありで最大筋活動が小さかった(支持なし:13% MVC、支持あり:10% MVC)。棘下筋、肩甲下筋は支持なしと支持ありに差を認めなかった(棘下筋:5-10% MVC、肩甲下筋:10-20% MVC)。
Electromyographic activities of the subscapularis, supraspinatus and infraspinatus muscles during passive shoulder and active elbow exercises.

鏡視下腱板修復術後を想定した場合、この研究の対象が健常者であることと、立位で運動を実施している点で直接的な根拠とはなりえませんが、少なくとも、上腕が支持されていた方が棘上筋の筋活動を小さくできそうです。ベッド上背臥位で、術側の上腕の下にタオルを置いて、患者自身が反対の手で術側の肩を抑えた状態で、肘関節自動屈伸運動を実施する、そんな方法であればさらに腱板の筋活動を小さくできるのではないでしょうか。

肩甲帯運動

対象は24-32歳の健常者5名、被検筋は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋上部線維(針筋電図)、および三角筋、僧帽筋、上腕二頭筋、前鋸筋(表面筋電図)。肩関節装具装着下、立位での肩甲骨時計運動、挙上、下制、外転、内転時の最大筋活動を%MVCで算出。棘上筋の筋活動は、肩甲骨下制、外転運動において20%MVC未満であったが、時計運動、挙上、内転運動において30%MVCよりも高い筋活動を示した。棘下筋、上腕二頭筋は全ての運動において10%MVC未満の活動であった。肩甲下筋上部線維は全ての運動において40%MVC以上の筋活動を示した。(三角筋、僧帽筋、前鋸筋の結果は省略)
Electromyographic activity in the immobilized shoulder girdle musculature during scapulothoracic exercises.

この研究においても、対象が健常者であることやサンプルサイズが小さいことに限界はありますが、装具装着下での肩甲骨運動時の腱板活動に関する有益な情報を示しています。本研究結果に基づくと、棘上筋および棘下筋の1-2腱断裂に対する鏡視下修復術後では、肩甲骨下制、外転運動は概ね安全な運動と解釈できます。追加処置として上腕二頭筋長頭腱の切離や腱固定を行っても、これらの運動を行うことにリスクはなさそうです。一方、棘上筋腱修復後早期の肩甲骨時計運動や挙上、内転の単独での実施には安全ではないレベルの筋活動を伴うため、推奨できません。加えて、肩甲下筋腱を含む断裂の場合、術後早期に上記の肩甲骨単独運動を実施するのは安全とは言えません。

個人的には、実際に術後の患者さんにこの研究のように肩甲骨単独の運動を努力下で実施するのはやや肩関節の過剰な筋活動を招くと考え、体幹の屈伸や回旋運動を伴いながら実施しています。肩関節周囲の過剰な筋活動をおさえたい、固定期間中もなるべく体幹(胸郭)の可動性を維持したい、そんなことを思いながらやってます。


肩関節運動


肩関節他動運動、自動介助運動、自動運動時の腱板筋活動を評価した研究は複数あったため、以下に代表的な3つの研究の対象と方法を要約したうえで、術後固定期間中の他動運動、固定除去後の自動介助運動および自動運動について押さえておくべきポイントを整理しました。

対象は22-28歳の健常者15名、被検筋は棘上筋、棘下筋(針筋電図)、および三角筋前部(表面筋電図)。肩関節他動運動、自動介助運動、および自動運動時の筋活動を%MVCで算出。
Gaunt 2010, Sports Health. An electromyographic evaluation of subdividing active-assistive shoulder elevation exercises.

対象は25±5歳の健常者10名、被検筋は棘上筋、棘下筋(針筋電図)、および三角筋前部、僧帽筋、前鋸筋(表面筋電図)。肩関節他動運動、自動介助運動、および自動運動時の筋活動を%MVCで算出。
Uhl 2010, PM R. Electromyographical assessment of passive, active assistive, and active shoulder rehabilitation exercises.

対象は53±10歳の術後患者26名(肩峰下除圧術、鎖骨遠位切除、および組み合わせ)。術後4日以内に測定を実施。被検筋は棘上筋、棘下筋(針筋電図)。肩関節他動運動、自動介助運動時の筋活動を安静時の筋活動と比較。
Murphy 2013, J Shoulder Elbow Surg. Electromyographic analysis of the rotator cuff in postoperative shoulder patients during passive rehabilitation exercises.


他動運動


  • セラピストが行う他動外旋運動および他動挙上運動、棒を用いて患者自身が行う他動外旋運動、振り子運動、等尺性内旋運動、等尺性内転運動では棘上筋の筋活動は安静時と差がない(Murphy 2013)
  • 他動運動であっても、外旋や挙上運動時は棘下筋の筋活動は安静時よりも高い(Murphy 2013)
  • 棘上筋、棘下筋ともに、プーリーを用いた自動介助運動では、セラピストが行う他動外旋運動および他動挙上運動、棒を用いて患者自身が行う他動外旋運動よりも高い筋活動が生じる(Murphy 2013)
  • 棘上筋、棘下筋ともに、等尺性外旋、外転運動では等尺性内旋、内転運動よりも筋活動が高い(Murphy 2013)
固定期間中に他動運動を実施するにあたり、セラピストが行う他動外旋や挙上運動は術後早期から実施可能できる安全な運動といえます。棒を用いて患者自身が行う他動外旋運動も、実施方法に注意すれば早期から行える運動の1つです。肩甲下筋に損傷がなければ、等尺性の内旋、内転運動の実施も早期より可能と言えます。

一方、プーリーを用いた自動介助運動では他動運動よりも棘上筋や棘下筋の筋活動が高く、等尺性外旋や外転運動では等尺性内旋や内転運動よりも2筋の筋活動が高いという結果が得られました。これらの運動は他動運動ではなく、自動運動開始後に実施できる運動に分類することが推奨されます。


自動介助運動および自動運動


  • 重力除去下の自動介助運動(側臥位にて台上を滑らせる挙上運動、背臥位にてセラバンド抵抗下の90°以上の挙上運動、タオルスライド)は、棘上筋の筋活動が7-13%MVC程度である(Gaunt 2010)
  • 重力除去下の自動介助運動(タオルスライド、バランスボールを用いた肩甲骨外転運動)と他動挙上運動時の筋活動に差はない(Uhl 2010)
  • 抗重力肢位での自動介助運動(棒を用いた自動介助での挙上運動、ボールを転がす運動、壁に手を当て指で歩くような挙上運動)は、重力除去下の運動(側臥位にて台上を滑らせる挙上運動、背臥位にてセラバンド抵抗下の90°以上の挙上運動)と比較して棘上筋の筋活動が高く、13-19%MVCの活動が生じる(Gaunt 2010)
  • 自動挙上運動では他動運動や自動介助運動と比較して棘上筋の筋活動が高く、18-29%MVCの活動が生じる(Gaunt 2010, Uhl 2010)

固定除去後の自動介助運動、自動運動を進めていく際は、上記の研究結果も踏まえると、一例として、まずは背臥位で棒を用いた自動介助運動から開始し、座位でのタオルスライドのような抗重力肢位での自動介助運動、立位で棒を用いた自動介助運動、最終的に立位での自動挙上運動へと進めることで、漸増的に棘上筋の筋活動を高めることができます。背臥位でセラバンドを用いた抵抗下挙上運動も、上肢の重みより小さい負荷にすることで段階的に負荷を与えることができそうです。


おわりに


鏡視下腱板修復術後患者を日常的に担当していると、可動域が順調に回復していく症例から、その回復に苦労する症例まで様々です。そのため、術後リハビリテーションプロトコルは、断裂部位やタイプ、断裂サイズや腱の質、追加処置、術前の可動域、年齢、生活週間、健康状態など様々な因子を踏まえて微修正する必要があります。医師とのコミュニケーションもとっても大切です。修復した腱板を保護しつつ、なおかつ円滑に可動域を獲得するために。患部外エクササイズや肩関節運動時の筋活動のデータをうまく活かしたいですね。


腱板損傷 8725568690040771728

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