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腱板修復術後早期の修復腱の強度はどれくらいか?

腱板損傷は50代以降に多く発生する肩障害で、その後年齢とともに存在率が増大します。腱板損傷があるからといって必ずしも手術が選択されるわけではなく、保存療法が選択される場合も多くあります。理学療法によって75%の腱板損傷患者が手術を回避できたとする報告もあります。このように症状に対しては理学療法の有効性が示されている一方で、腱板修復術の件数は年々増加しています。なかでも鏡視下腱板修復術件数は過去10年間で600%も増加していると報告されました(Colvin 2012, J Bone Joint Surg Am.)。我が国では高齢化が進行していることも踏まえると、今後も腱板修復術の件数は増加していく可能性が高いと言えます。

鏡視下腱板修復術は一般的に良好な成績が報告されていますが、報告されている再断裂率は16-94%と差があります。修復された腱の治癒には、縫合糸の種類や強度、骨-腱の接触面積・圧、腱板の脂肪変性、断裂サイズ、術後リハビリテーションなどの様々な因子が考えられ、再断裂のリスクを可能な限り低く抑えるためには、これらの因子について正確に理解する必要があると言えます。再断裂は一般に術後3ヶ月以内に多く発生するため、特に術後リハビリテーションを担当する理学療法士は、腱板修復術後早期の修復腱の強度について知っておくべきです。



腱板修復術後の治癒過程


術後0-1週(炎症期):修復部位に炎症細胞、血小板、線維が細胞が移動
術後1-2週(修復期):成長因子により細胞集積、マトリックス沈着が促進
術後2週以降(リモデリング期):瘢痕組織の形成

参考: Growth factors for rotator cuff repair. (Gulotta 2009, Clin Sports Med.)


動物実験に基づく修復腱の強度


Miyaharaらは、犬を対象として修復された棘上筋腱の破断強度を検証しました。その結果、術後2週で損傷のないコントロール群に対して29.8%、術後6週で62.5%、術後24週で82.5%の強度であったと報告しました(Miyahara H, Takagishi K, Arita C, et al. A morphologic and biomechanical study on the healing of the repaired rotator cuff insertion in dogs: a preliminary report. In: post M, Morrey BF, Hawkins RJ, editors. Surgery of the shoulder. St. Louis: Mosby; 1990. p. 224-7.)。

Gerberらは、羊を対象として修復された棘下筋腱の破断強度を検証しました。その結果、術後6週で30%、術後3ヶ月で52%、術後6ヶ月で81%であったと報告しました(Gerber 1999, J Bone Joint Surg Am.)。

Feiらは、ウサギを対象として修復された棘上筋腱の破断強度を検証しました。その結果、術後8週で、Double-row群ではコントロール群の52%、Suture bridge群ではコントロール群の68%の破断強度であったと報告しました(Fei 2015, BMC musculoskeletal disorders)。

対象となった動物や腱に違いはありますが、以上の結果をまとめると以下の表のようになります。(術後リハビリテーションの観点から2週と6週、12週と24週との間に境界線を設けました)


おわりに


今回は、鏡視下腱板修復術後の修復腱の強度を明らかにするべく、動物実験の結果をレビューしました。この情報を参考に、術後リハビリテーションプロトコルを再考してみてはどうでしょうか。例えば。

術後固定期間が終了して、自動運動が開始となり、3ヶ月程度で日常生活に支障がなくなるという経過をたどる患者さんが多いけど、自動運動開始から3ヶ月程度までの期間において、修復腱の強度は30-50%しかない。再断裂のリスクが高い術後3ヶ月以内において、今行っているその運動の負荷は適切?日常生活や仕事で過負荷になってない?

術後6ヶ月頃からスポーツ再開の許可が出ることが多いけど、うん、今回の研究結果に基づけば確かに修復腱の強度は80%程度に到達しているし、ある程度の高い負荷にも耐えうることができそう。でも、術後3-6ヶ月のなかで、腱の修復を妨げずに徐々にスポーツに耐えうるだけの機能回復はできている?インピンジメントを招くような異常運動パターンは十分に修正されている?筋力は十分に回復している?

対象の違いや術式の違いなどから、今回のレビュー結果をそのまま腱板修復術後患者に当てはめることはできませんが、現在利用できるエビデンスの1つとして、運動療法やADL復帰を進めていく参考になるのではないかと考えます。

“おじけづいて踏み出せない人ではなく、リスクを顧みず動き回る人でもなく、勇気と冷静さを併せ持つ探求者であれ” 

 以前、プロフェッショナル仕事の流儀で産科医の川鰭市郎が紹介されていた、イラン・ティモール医師の心構えです。とても心に響く言葉でした。私も、腱板再断裂におじけづいて機能回復を進められない人ではなく、再断裂のリスクを顧みずどんどん運動させてしまう人でもなく、勇気と冷静さを併せ持った探求者になりたいと思います。

腱板損傷 9085566472443828259

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