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肘関節内側側副靭帯部分断裂に対するPRP療法の効果

多血小板血漿(platelet-rich plasma: PRP)療法ってどんな治療なの?
ヤンキースの田中投手のニュースをみて、疑問に思った方が多いことと思います。
私もその名を耳にすることはあっても詳しくは知らなかったので、PRP療法とその効果について調べてみることにしました。


PRP療法とは


ヤンキースのチームドクターであるDr. Ahmadが、コロンビア大学メディカルセンターのHPでPRP treatment therapyについて解説されていました。
PRP療法の主要なゴールは、損傷した軟部組織の治癒促進にあると述べています。
内側側副靭帯(UCL)断裂に対してトミー・ジョン手術を実施した場合、通常1年程度の長い復帰期間を必要としますが、部分断裂患者の早期復帰を考える際に、PRP療法が選択肢の1つになり、ここにPRP療法の意義があると言えるかと思います。

PRPって何?PRP療法ってどんな治療?という点に関して。
血液は赤血球、白血球、血小板のような血球と血漿から構成されますが、簡単に言うと、遠心分離器を用いて血小板を赤血球や血清から分離したものを多血小板血漿(PRP)と呼ぶようです。
肘であれば治療側と反対の肘窩から血液を採取し、遠心分離によって得られたPRPをUCLの病変部位に注入する、というのがPRP療法の概要です。


肘関節内側側副靭帯部分断裂に対するPRP療法の効果


PRP療法は整形外科分野では比較的新しい治療のようで、内側側副靭帯に対するPRP療法に関する報告でヒットしたのはこちらの1件のみです。(2014/7/20)
Treatment of partial ulnar collateral ligament tears in the elbow with platelet-rich plasma.

簡単に研究内容をまとめます。

【対象】

  • UCL部分断裂患者34名(野球27、ソフト3、テニス2、バレー2)
  • 野球は27名全員が投手(プロ2、大学11、高校10、その他4)
  • 男性28名・女性6名
  • 平均年齢18歳(12-33歳)
  • 平均競技歴10年(6-22年)
  • MRIグレード1または2のUCL部分断裂
  • 少なくとも2ヶ月の保存療法に失敗
  • 完全断裂は除外

【方法】
  • アウトカム
    • 機能スコア(KJOC、DASH)
    • 外反不安定性(超音波評価)
  • 介入
    • PRP療法
    • リハビリテーション

【結果】

  • フォローアップ期間70週(11-117週)で30/34名(88%)が競技復帰
  • 平均復帰期間12週(10-15週)
  • 機能スコア、外反不安定性改善
  • 1名のみUCL機能不全が持続し、注射後31週後に靭帯再建術実施
  • 合併症はなし


以上が34名のケースシリーズ研究の結果ですが、この報告によると、UCL部分断裂に対するPRP療法の治療成績は概ね良好のようです。
ただし、今回の研究対象に含まれたプロ選手は2/27名(7%)のみで、11/27名(41%)が大学生、10/27名(38%)が高校生でした。
したがって、結果をプロレベルの選手に一般化することは難しいと言えます。
それを踏まえたうえで、現在利用できる(おそらく現時点では唯一の)UCL部分断裂に対するPRP療法に関する報告、として本研究結果を捉えるべきかと思います。


ところで、田中投手はなんでシアトルに行ったの?


これはチームドクターのDr. AhmadがAmerican Orthopaedic Society of Sports Medicine (AOSSM) の学会に参加していたためです。
投球障害肩のセッションで座長をされていたので、私も発表の際にお世話になりました。




Instructional course lectureではUCL再建術についてご講演されていました。



このelbow injuries in throwing athletesというセッションの講演内容にもあったように、UCL部分断裂の場合、治療の選択肢には休止、リハビリテーション、PRP療法、靱帯修復術、靭帯再建術があり、あらゆることを勘案したうえで最適な治療法が選択されます。

ニュースを単なるニュースとして聞き流してしまうのではなく、なぜ?どうして?自分ならどうするだろう?などと考えることで、そこから学ぶことができるのではないかと思います。

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